最高裁判所第一小法廷 昭和37年(あ)1931号 決定 1963年3月28日
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人倉崎忠治の弁護人本村善太郎、同杉村進、同相川汎の上告趣意第一点は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、被告人の本件行為が刑法二四七条にいう「任務ニ背キタル行為」に当るものであって被告人の任務と無関係の行為といい得ないとした原判示は、原判決の確定した事実関係の下においては、正当として是認できる。また、所論引用の東京高等裁判所判決は、立木の伐採搬出を依頼された者が、伐採前の立木をほしいままに他に売却した事案であって、事案を異にし、本件に適切でない。)
同第二点は、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
被告人倉崎忠治の弁護人吉浦大蔵の上告趣意は、違憲をいう点もあるが、実質は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張を出でないものであって、同四〇五条の上告理由に当らない(刑法二四七条にいう「財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキ」とは、財産上の実害を発生させた場合のみでなく、実害発生の危険を生じさせた場合をも包含するものと解するを相当とする。昭和三三年(あ)第一一九九号、同三七年二月一三日最高裁判所第三小法廷判決、刑集一六巻二号六八頁参照)。
被告人倉崎忠治本人の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
被告人北島哲二の弁護人北川定務の上告趣意は、量刑不当の主張であって、同四〇五条の上告理由に当らない。
被告人江里薩摩の弁護人松下宏の上告趣意は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、同四〇五条の上告理由に当らない。
記録を調べても所論の点につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤朔郎 裁判官 高木常七)